私が使った現像液の感想
はじめに
この記事は銀塩写真 Advent Calendar 2020の12月7日の記事になります。
前回の記事は私の私が使った白黒ネガフィルムの感想でした。
今回は、私がおすすめする現像液について書きます。
前回と同じ写真が載ってると思いますが、今度は現像液ごとに分けてみたということでお許しください。
おすすめの現像液
ロディナル
公式ホームページ http://www.rodinal.jp/
1888年に、ドイツのアグファで作られた現像液です。もっとも、一般的にはロジナールという名前で知られています。この現像液の歴史は東西ドイツ分裂も含めていろいろとややこしいことがありました。今ではドイツのアドックスがロディナルいう商品名で出していますが、商標の問題でロディナルという名前が使えないこともあったようで、アドナルという名前で出していたこともありました。さらに、これは「西ドイツ」の話で、「東ドイツ」は同じルーツを持つ現像液がR09という名前で出ていたりしました。アドックスのロディナル(アドナル)とR09の違いは原材料のクオリティぐらいで、同じ現像データが使えるとのことです。成分が取扱注意レベルらしく航空便で送れなくなってしまったので、このコロナ禍では入手がかなり難しくなってしまいました。と思うと100ml入りのものを2本注文したはずなのに送られてきたものが500ml入り2本でここしばらくはなんとかなりそうどころか、3年は多分戦えるのではないかと予感がしています。
無事商品が届きましたが、中を開けて驚きました。
— ヨーシャ(創作・同人・写真アカウント) (@IosifHuide) October 9, 2020
100mlのロジナール2本を注文したはずなのに500ml2本が届きました。
ロジナールの開栓後の使用期限は6ヶ月と聞いたことがあり、500mlだと3ヶ月どころか6ヶ月経っても使い切れない恐れがあるので心配です。
とりあえず、返送した方がよいでしょうか? pic.twitter.com/18FQ3pXWrq
私が一番よく使う現像液なのですが、実にいろいろな使い方ができる現像液です。この現像液は1回しか使えないのですが、ものすごく濃い液体なのでかなり希釈しても使えます。何せ標準が1+49という薄さなので10年経っても使い切れないという噂すらあります。保存のコツは小分けしてなるべくフレッシュな状態を保つのがコツだそうです。それで5年以上は持つとのこと。なお、冷蔵庫にぶち込むと中の成分が結晶化して使い物にならなくなります。
使ってみて気がつくのはシャープな現像液だということです。粒子はちょっと粗いです。それと、使い方によってはコントラストが弱くなりやすいです。
この現像液に入っているパラアミノフェノールという成分は解熱鎮痛剤アセトアミノフェンの原料としてセンター試験に出てきたこともある成分ですが、アセトアミノフェンを使っても現像液が作れるらしく、実際にタイレノールを使ってパロディナルという現像液を作ってみた人がいるらしいです。元化学部の私としてはやってみたいところですが、水酸化ナトリウムなどかなり取り扱いが難しい原料も使うので今は難しいと思います。
この現像液を手に入れるには、現状輸入代理店のホームページから通販で買うしかありません。後述のスーパープロドールみたいにヨドバシカメラに売っていないのが痛いところです。
1+25 濃いロディナル
私がよく使う配合がこれです。濃いのでコントラストが強めに出ます。
緊急事態宣言が出る前の3月3連休に井の頭公園の桜を撮りに行ってきた。
— ヨーシャ(創作・同人・写真アカウント) (@IosifHuide) April 20, 2020
レンズは #カメスズ さんで手に入れた謎タクマー。
📷 Canon EOS KISS III + SMC Takumar 50mm(?)
🎞 Kodak Tri-X 400TX
🧪 Rodinal 1+25 20℃ 6min#キリトリセカイ #ファインダー越しの私の世界 pic.twitter.com/6xyHrqcZ6Y
11月30日に撮ってきた、東京駅丸の内のイルミネーション。
— ヨーシャ(創作・同人・写真アカウント) (@IosifHuide) December 6, 2020
新婚カップルさんが数組。彼らの未来がよりよきものでありますように。
📷Canon EOS KISS III + Induster-61 L/Z 50mm
🎞 Fuji NEOPAN ACROS 100 II
🧪Rodinal 1+25 20℃ 6.5min#キリトリセカイ#ファインダー越しの私の世界 pic.twitter.com/nkyvbbJnNk
1+49 普通のロディナル
これが普通の使い方らしいですが、あまり使っていない気がします。使ってみた感触は1+25よりちょっと眠い感じがします。なお、この処方で現像した作例は今のところありません。
1+100 かなり薄いロディナルの静止現像
この使い方はちょっと独特な使い方です。普通の現像液だと大体1分おきに撹拌するのですが、この現像法だと最初30秒撹拌した後は一切撹拌しません。で、1時間。どんなフィルムでも1時間放置で現像できてしまうらしいです。2本以上処理する場合でも別々のフィルムが混ざっていて問題はないらしいです。こんな薄い濃度で大丈夫なのと思ってしまいますが、よい現像結果のためにはロディナルを最低5ml使う必要があるらしいです。30秒の撹拌を終えた後は、現像液を排出するまでネットサーフィンを決め込むのが私の流儀です。しかも薄いので、500ml入りのロディナル1を1回5mlで使う場合100回2できるという実に低コストなお財布にやさしい現像方法です。
ただ、この現像方法の残念なところはちょっとコントラストが弱くかなり眠い感じになってしまうところです。私は某鳥坂先輩とまでは行かなくてもある程度コントラストが強いのが好みなので、取り込んだ後にレタッチでコントラストをいじる必要がありそうです。
#ファインダー越しの私の世界 #キリトリセカイ
— ヨーシャ(創作・同人・写真アカウント) (@IosifHuide) February 15, 2020
東京競馬場。誰もいないターフ。冬晴れ。
📷 Canon EOS KISS III + SIGMA AF 28-200mm F3.5-5.6 ASPHERICAL
🎞 Ilford PANF Plus 50
🧪 Rodinal 1+112.5ぐらい 67minぐらい
※ Pythonスクリプト https://t.co/35qclz3O8M にて色反転 pic.twitter.com/jnbWdfxlBJ
母の影。
— ヨーシャ(創作・同人・写真アカウント) (@IosifHuide) December 3, 2020
そして金網の下に植物の命の息吹を感じる。
カメラ:Canon EOS Kiss III (レンズ不明)
フィルム:Lomography Berlin Kino
現像液:多分ロジナール pic.twitter.com/bcO6iLhSts
SPUR Silversalt現像液
公式ホームページ http://www.silversalt-dev.silversalt.jp/
ロディナルの輸入代理店、シルバーソルトがドイツのシュプールと共同開発した新しいオールラウンド現像液です。シャープネスもコントラストもいい感じなのに箱に書かれたフィルム感度そのままでいけてしまうすごい現像液です。
この現像液は1+20か1+30で希釈して使います。ISO200未満の場合は1+30で、それより高感度の場合は1+20で使うようです。
こんなすごい現像液なのですが、手に入る手段は輸入代理店シルバーソルトの通販オンリーです。当然ヨドバシカメラでは手に入りません。
#Kodak日本一周#Kodakと東京
— ヨーシャ(創作・同人・写真アカウント) (@IosifHuide) November 4, 2020
発表済みですが、朝の渋谷を。
ハチ公にかけられたたすきの言葉の重さが深く胸に刺さります。
📷 Canon EOS KISS III + Super Takumar 50mm F1.4 と見られる謎レンズ
🎞 #kodaktrix400 (某鳥坂先輩曰く万全のフィルム)
🧪 SPUR Silversalt現像液 20℃ 約13分 pic.twitter.com/gXkg9jUCX5
スーパープロドール
公式ホームページ https://www.fujifilm.com/jp/ja/consumer/films/monochrome
コロナ禍でロジナールの入荷が止まって仕方なく使った現像液です。コダックのD-76同様原液をそのまま使うことも1+1に薄めて使うこともできますが、原液の場合は現像液が疲労するまで数本処理できるという特徴があります。もっとも粉末なので1lの水に溶かなければいけないのがつらいところです。
ウナギのタレ方式といって数回使ったものに新しい成分を継ぎ足し継ぎ足し……という使い方をしている人もいるみたいですが、私の場合は同じ現像液を使うのは2回で終わりにしています。なぜかというと、フィルムクリップが2組しかないので、1日に2本処理するのが精一杯だからです。で、1週間後にまた2本……で使い切ってしまいます。もったいないというのはわかっているのですが。
使ってみた感触は感度がよくちょっとコントラストが強い感じです。粒子もそこまでうるさくないのですがシャープさが少し弱い気がします。いい感じにできるのですが、粉溶く手間を考えると使うのが大変だなという感じです。ヨドバシカメラで400円ぐらいで売っているので気軽に入手できるのが助かるところです。
今日の現像成果。
— ヨーシャ(創作・同人・写真アカウント) (@IosifHuide) June 7, 2020
緊急事態宣言解除前の井の頭公園。
意外と人は多かった。
それにしてもカイツブリディスタンス is 何?#ファインダーの中の私の世界#キリトリセカイ
📷 Canon EOS KISS III + 謎タクマー50mm
🎞 KODAK T-MAX 100
🧪 スーパープロドール 原液 24℃ 約4分 pic.twitter.com/8Vo43PoBD9
Caffenol-C
いわゆる、インスタントコーヒーを使って現像するときの現像液です。インスタントコーヒーにはハイドロキノンという美白などにも使われる成分が含まれているのですが、それと現像力を補うビタミンCと液性を塩基性にするための炭酸ナトリウム3を水に溶かして作ります。レシピによっては臭化カリウム4というかぶり5を防止する成分を微量入れることがあります。大体の原料はAmazonで手に入れましたが、百均でも手に入るという噂があります。
レシピ
このCaffenol-Cにはいろいろなレシピがあります。詳しくは次のページにまとめられています。
様々なレシピを紹介しているページ http://over-drive.co.jp/photograph/tsurezure_caffenol_c.html
大体はCaffenol-C-Mというレシピに落ち着くのですが、ISO400以上のフィルムの場合はブロムカリを微量入れるCaffenol-C-Hがよいと言われています。面白いことに、これにも静止現像用のレシピであるCaffenol-C-Lがあり、こちらは70分放置らしいです。また、ビタミンCを増やし炭酸ナトリウムを減らしたデルタレシピというバリエーションがあります。
富士フィルムのACROS IIの作例ならこれかなぁ。昨年末のコミックマーケット97 4日目の紅の豚コスプレをしていた @dugongr さんを撮影した1枚。
— ヨーシャ@アメリア・ツァオ (@AmeliaTsao) January 27, 2020
現像はCaffenol C-M。つまり焼いた重曹とビタミンCを加えためっちゃ濃いコーヒー。意外とよく像が出たなぁと。 pic.twitter.com/Kkqnhvpd6j
今日の現像の成果。新宿駅の夜のイルミネーション。#ファインダー越しの私の世界#キリトリセカイ#写真好きな人と繋がりたい
— ヨーシャ@アメリア・ツァオ (@AmeliaTsao) December 29, 2019
カメラ:EOS Kiss III
レンズ:Industar-61 L/Z 50mm f2.8
フィルム:Kodak T-MAX 100
現像液:Caffenol C-M Delta Recipe 22℃ 12分
色反転・レタッチ:GIMP 2.10 pic.twitter.com/31jj2kmUDn
終わりに
自家現像も面白い世界なので、やってみると面白いですよ。
次の担当は未定ですが、おそらく12月13日の私のになりそうです。