恢徳堂のヨーシャさんのブログ

私が使った現像液の感想

December 06, 2020

はじめに

この記事は銀塩写真 Advent Calendar 2020の12月7日の記事になります。
前回の記事は私の私が使った白黒ネガフィルムの感想でした。
今回は、私がおすすめする現像液について書きます。
前回と同じ写真が載ってると思いますが、今度は現像液ごとに分けてみたということでお許しください。

おすすめの現像液

ロディナル

公式ホームページ http://www.rodinal.jp/

1888年に、ドイツのアグファで作られた現像液です。もっとも、一般的にはロジナールという名前で知られています。この現像液の歴史は東西ドイツ分裂も含めていろいろとややこしいことがありました。今ではドイツのアドックスがロディナルいう商品名で出していますが、商標の問題でロディナルという名前が使えないこともあったようで、アドナルという名前で出していたこともありました。さらに、これは「西ドイツ」の話で、「東ドイツ」は同じルーツを持つ現像液がR09という名前で出ていたりしました。アドックスのロディナル(アドナル)とR09の違いは原材料のクオリティぐらいで、同じ現像データが使えるとのことです。成分が取扱注意レベルらしく航空便で送れなくなってしまったので、このコロナ禍では入手がかなり難しくなってしまいました。と思うと100ml入りのものを2本注文したはずなのに送られてきたものが500ml入り2本でここしばらくはなんとかなりそうどころか、3年は多分戦えるのではないかと予感がしています。

私が一番よく使う現像液なのですが、実にいろいろな使い方ができる現像液です。この現像液は1回しか使えないのですが、ものすごく濃い液体なのでかなり希釈しても使えます。何せ標準が1+49という薄さなので10年経っても使い切れないという噂すらあります。保存のコツは小分けしてなるべくフレッシュな状態を保つのがコツだそうです。それで5年以上は持つとのこと。なお、冷蔵庫にぶち込むと中の成分が結晶化して使い物にならなくなります。

使ってみて気がつくのはシャープな現像液だということです。粒子はちょっと粗いです。それと、使い方によってはコントラストが弱くなりやすいです。

この現像液に入っているパラアミノフェノールという成分は解熱鎮痛剤アセトアミノフェンの原料としてセンター試験に出てきたこともある成分ですが、アセトアミノフェンを使っても現像液が作れるらしく、実際にタイレノールを使ってパロディナルという現像液を作ってみた人がいるらしいです。元化学部の私としてはやってみたいところですが、水酸化ナトリウムなどかなり取り扱いが難しい原料も使うので今は難しいと思います。

この現像液を手に入れるには、現状輸入代理店のホームページから通販で買うしかありません。後述のスーパープロドールみたいにヨドバシカメラに売っていないのが痛いところです。

1+25 濃いロディナル

私がよく使う配合がこれです。濃いのでコントラストが強めに出ます。

1+49 普通のロディナル

これが普通の使い方らしいですが、あまり使っていない気がします。使ってみた感触は1+25よりちょっと眠い感じがします。なお、この処方で現像した作例は今のところありません。

1+100 かなり薄いロディナルの静止現像

この使い方はちょっと独特な使い方です。普通の現像液だと大体1分おきに撹拌するのですが、この現像法だと最初30秒撹拌した後は一切撹拌しません。で、1時間。どんなフィルムでも1時間放置で現像できてしまうらしいです。2本以上処理する場合でも別々のフィルムが混ざっていて問題はないらしいです。こんな薄い濃度で大丈夫なのと思ってしまいますが、よい現像結果のためにはロディナルを最低5ml使う必要があるらしいです。30秒の撹拌を終えた後は、現像液を排出するまでネットサーフィンを決め込むのが私の流儀です。しかも薄いので、500ml入りのロディナル1を1回5mlで使う場合100回2できるという実に低コストなお財布にやさしい現像方法です。

ただ、この現像方法の残念なところはちょっとコントラストが弱くかなり眠い感じになってしまうところです。私は某鳥坂先輩とまでは行かなくてもある程度コントラストが強いのが好みなので、取り込んだ後にレタッチでコントラストをいじる必要がありそうです。

SPUR Silversalt現像液

公式ホームページ http://www.silversalt-dev.silversalt.jp/

ロディナルの輸入代理店、シルバーソルトがドイツのシュプールと共同開発した新しいオールラウンド現像液です。シャープネスもコントラストもいい感じなのに箱に書かれたフィルム感度そのままでいけてしまうすごい現像液です。

この現像液は1+20か1+30で希釈して使います。ISO200未満の場合は1+30で、それより高感度の場合は1+20で使うようです。

こんなすごい現像液なのですが、手に入る手段は輸入代理店シルバーソルトの通販オンリーです。当然ヨドバシカメラでは手に入りません。

スーパープロドール

公式ホームページ https://www.fujifilm.com/jp/ja/consumer/films/monochrome

コロナ禍でロジナールの入荷が止まって仕方なく使った現像液です。コダックのD-76同様原液をそのまま使うことも1+1に薄めて使うこともできますが、原液の場合は現像液が疲労するまで数本処理できるという特徴があります。もっとも粉末なので1lの水に溶かなければいけないのがつらいところです。

ウナギのタレ方式といって数回使ったものに新しい成分を継ぎ足し継ぎ足し……という使い方をしている人もいるみたいですが、私の場合は同じ現像液を使うのは2回で終わりにしています。なぜかというと、フィルムクリップが2組しかないので、1日に2本処理するのが精一杯だからです。で、1週間後にまた2本……で使い切ってしまいます。もったいないというのはわかっているのですが。

使ってみた感触は感度がよくちょっとコントラストが強い感じです。粒子もそこまでうるさくないのですがシャープさが少し弱い気がします。いい感じにできるのですが、粉溶く手間を考えると使うのが大変だなという感じです。ヨドバシカメラで400円ぐらいで売っているので気軽に入手できるのが助かるところです。

Caffenol-C

いわゆる、インスタントコーヒーを使って現像するときの現像液です。インスタントコーヒーにはハイドロキノンという美白などにも使われる成分が含まれているのですが、それと現像力を補うビタミンCと液性を塩基性にするための炭酸ナトリウム3を水に溶かして作ります。レシピによっては臭化カリウム4というかぶり5を防止する成分を微量入れることがあります。大体の原料はAmazonで手に入れましたが、百均でも手に入るという噂があります。

レシピ

このCaffenol-Cにはいろいろなレシピがあります。詳しくは次のページにまとめられています。

様々なレシピを紹介しているページ http://over-drive.co.jp/photograph/tsurezure_caffenol_c.html

大体はCaffenol-C-Mというレシピに落ち着くのですが、ISO400以上のフィルムの場合はブロムカリを微量入れるCaffenol-C-Hがよいと言われています。面白いことに、これにも静止現像用のレシピであるCaffenol-C-Lがあり、こちらは70分放置らしいです。また、ビタミンCを増やし炭酸ナトリウムを減らしたデルタレシピというバリエーションがあります。

終わりに

自家現像も面白い世界なので、やってみると面白いですよ。

次の担当は未定ですが、おそらく12月13日の私のになりそうです。

  1. 輸入代理店のシルバーソルトの場合、2630円+送料670円。 

  2. この計算の場合1回あたりのコストは約33円。実に安い。 

  3. 重曹を加熱したもので代用可能。 

  4. 別名ブロムカリ。 

  5. 普通に感光しなかった部分がなぜか感光してしまう現象。